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 思いつきで作った女児がおしっこを我慢したりおもらししたりするだけの作品です。
 別作品の主人公もサブキャラとして登場したりします。
 その日の教室は楽しげな声で溢れていた。
 本日最後の授業が自習時間の上、先生が不在ということもあり、仲の良い友達同士で談笑する子や自席で黙々と配布された学習プリントを解く子、読書をする子と思い思いに過ごしている。
 腕枕に顔を半分沈めて、クラスメイト達をぼんやりと眺めていた時だ。私の隣に座る新堂千里の様子がおかしいことに気がついたのは。

「ん……ぅう………はぁはぁ……」

 目だけがキョロキョロとせわしなく動き、短距離走を走った後みたいな整わない呼吸。机の上に広げられたプリントは白紙のままでシャープペンシルや消しゴムなどの筆記用具も筆箱から出される気配がない。それどころか、それらを使う両手は黒いプリーツスカートをしわが出来るほど強く握り締めていて、そこから伸びる足は太ももと膝頭をぴったりと合わせた状態で小刻みに動いている。

(この子、もしかして……)

  仕草と表情から私は、彼女が身悶えている理由を察した。この喧騒の中、他に気づいた人はいないようだが、赤く上気した顔、瞳に光る涙が彼女の辛さを言葉なく語っており、このままでは近い未来に最悪の結果を迎えてしまうことは明らかだ。
私は眠気で落ちそうになっていたアタマを再起動し、これから自分がどうするべきか考えることにした。

(一番いいのはさっさとトイレに連れて行くことだけど……)

 普段なら先生に挙手をしてトイレに行く旨を告げればいい。だが、今は先生が不在の自習時間だ。よって、教師に準ずる権力を持つ人間に許可を取らなければならない。
 その人物とは……

(……委員長かぁ……あの子、性格キツいんだよね……)

 ちらりと教壇の前の据えられた席に目を向けた。
 周りの人に隠れてしまいそうなほど小さな背中とウェーブのかかったセミロングの髪が確認できる。この5年3組のクラス委員長を務める遠山華世の後ろ姿だ。
 学年を間違えてしまうくらい小柄な体躯にも関わらず同年代や年上はもちろん、先生にさえも物怖じしない態度と苛烈な口調、ネコ科の動物を連想させる鋭い目つきが特徴の女の子だ。先日も隣のクラスの委員長とイザコザを起こしただの、他の生徒を恐怖で失禁させただの、よくない噂が絶えない。そんな彼女にある子達は畏敬の念を、またある子達は畏怖の念を抱いてる。私はどちらかといえば後者だ。
 頭の回転が早い彼女から適当な理由では教室を抜ける許可を取りつけるのは難しい。下手すれば余計な詮索をされかねないだろう。ここは正直に話すべきだろうか?

「あっ!あ……やだっ………」

  隣から聞こえていた苦しげな声のトーンが変わり、私の思考が寸断される。それに一拍遅れて、ポタリという液体の弾ける音が私の耳に届いた。
 新堂さんの足元を注意深く観察するとおしりと椅子の間に敷かれたスカートの裾から、閉め忘れた蛇口の如く雫が一滴、二滴と連なって落ちていく。

(あぁ、もう……仕方ないっ……)

 新堂さんに残された時間が少ないことを再認識させられた私は意を決して立ち上がると、教壇前の机に向かった。

「あの……委員長……ちょっといい?」

「………なに、箱崎さん?」

  ノートに走らせていたシャープペンシルの動きを止めて、私を見上げる恐怖の権化。
 委員長の開口にそれまで騒がしかったクラス中の声がぴたりと止んだ。

「い、いや……あのさ、新堂さんがさ……体調悪そうだから……」

 まるで、アーティストがライブ開始前の口上を述べるみたいにそこにいる全員が私の話に、件の少女に注目している。もっとも、当の本人は周りのことを気にする余裕もないようだが。

「………だから?」

「えっと……トイレに付き添ってあげようかって……」

 委員長の視線が言い淀む私から後方にいる新堂さんに移る。水を打ったように静まり返った室内で聞こえるのは、新堂さんの吐息混じりな絶え絶えの声と秒針がカチカチと時を刻む音だけだ。

「………………」

 言葉のキャッチボールが行われない時間。数十分にも数時間にも思える数秒が経過する。
  そして、新堂千里にとって公開処刑の宣告にも等しいその言葉は放たれた。

「ダメよ」

「な、なんでよ?自習時間なんだし、誰に迷惑かけるわけでもないんだからいいでしょ?」

「トイレなんて授業が始まる前の休み時間に済ませておくのが当たり前。来年、私達は最上級生になるのよ。そんな見本となる立場がトイレに行くの忘れたから行かせてくださいなんて、そんな甘えは通じないし許さない。これが理由よ」
  
 彼女の言うことがもっともすぎて反論することが出来ない。
  委員長の席に戻れという言葉が耳に入ってはくるが、何か言わないといけないという焦りで身体を動かすほうにまで気が回らなくなっていた。

「……聞こえないの、箱崎歩さん?」

 気がつけば、私を見る彼女の瞳はクラスメイトを見つめるものではなくなっていた。
  知りうる限りの猛獣を空腹状態で一つの檻に閉じ込めて、その中に丸裸で放り込まれたような恐ろしさに全身の毛が逆立つ。
 今までに体験したことがない怖気に、じわりとパンツの中が温かくなるのを感じていた。

第二話に続く
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2016.02.15 Mon l 少女はそれを我慢できない l コメント (0) トラックバック (0) l top

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